無題（仮）

小さな街の
小さな話

でもそれはとても大きいもので
とてもありふれたもの。

それでも・・・

貴方は聞いてくれますか？

ゆく先も見えなく

ただひたすらに走っていた毎日

足を止めることもなく

差し伸べられた手をも振り払う

そんな日々

しかしそんな日常でも

簡単に終わってしまう。

そう、僕たちは恋をした。

それは小さくて、とても大きな事

汚されても、汚れても

いつまでも綺麗なままの

今なら鼻で笑ってしまうような

大切な恋の話。

優しくても、臆病

でも真っ直ぐな人。

優しくて、よく気の利く

臆病な人。

そんな二人のお話。

出会いなんて唐突で

いつもイタズラ

それでもそんなイタズラを受け入れてしまった

ふとしたその出会いに

恐怖すら感じた

しかし

お互いが持ち合わせた

ちょっとだけの優しさ

それが二人を

より深く繋げる。

繋がる心にすがりつき

何かに怯えるように

またすがりつく。

お互いに笑顔で

いつも手を取り

励まし

慰め

時にはお互いを叱り

そしてすっかりと

お互いに堕ちてしまう・・・。

離れている時もそばにいて

そばにいるときは

もっと近くに。

しかし

所詮はイタズラ

堕ちゆく者の末路なのか

終わりはくるものである。

なにやら浮かない顔

いつもなら

笑わせてやるところだが

・・・何かが違う。

なんだ？

どうしよう

・・・怖い。

怖くてたまらない

ここから逃げ出したい。

・・・今更そんなことは・・・出来ないな。

ずっと向き合ってきたんだ。

「どうしたの？」

震える手で頬に触れる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・


一瞬なにが起こったのかわからない

手の痛み

・・・そう

今までに感じた事のない

強い痛み

振りほどかれた

行き場をなくした手。

自分のしたことに

罪悪感と恐怖の色を浮かべる

触れられなかったその顔・・・。

「・・・ごめん」

そして・・・

重たい口が開かれる

「怖いの・・・」

・・・え？

「貴方の・・・優しさと、綺麗な目が怖いの！」

・・・

その言葉を最後に

その日は別れた。

数日後

もう一度会って話してはみたが

答えてはもらえず

迫られる決断

「別れ・・・よう？」

切り出せない彼女への

俺に出来る

彼女が怖いと言った

その

最後の小さな優しさ

しかし・・・

最後に繋いだ手が離れない

それを察した彼女の

見たこともない涙

色んなものが詰まった

とても綺麗な涙

そして最後に

「お前は・・・何も悪くないんだよ？」

・・・嘘をついた。

ずっとそばに居て欲しいのに

離したくないのに

もう一度笑顔が見たくてついた

どうしようもない嘘。

彼女のことだ・・・

きっと勘づいたのだろう。

今も心に残る

最後に見せてくれた

悲しげなのに

変わらない笑顔。

そして

繋いだ手は離れた。



今も思う

他愛のない日常

二人が出会ったことなど

ほんのひとかけらの

僕らのよく見る

道ばたの石ころのようだ。

でも

そんな小さな恋は

まだ終わらない。

心に刻んだ想い出があるかぎり

それは変わらない恋心だから・・・。




この話は人それぞれで受け取ってください
きまぐれで書いたものです
実体験かどうかは
あなたの想像にお任せします。